韓国にとってのチョコパイ「情」とは

初めて韓国に行ったときオリオン製菓の情というチョコパイの駅広告を見かけた。そんなにおいしくもないお菓子なのにずいぶん大きい広告出すんだな、などとその時は思ったが、韓国にとってチョコパイは日本に比べ意味合いがずっと重い。今回は韓国のチョコパイに対する思いや政治的利用方法を紹介する。

韓国でチョコパイを売る会社は大きく分けてロッテとオリオンが挙げられる。ロッテは日本でも有名だが、韓国ではチョコパイといえばオリオン製菓のものを思い浮かべる人のほうが多いと思われる。そのオリオン製菓の「情」というお菓子の名前がまた、韓国らしい。ここでいう情というのは日本語で言えば、「思い、愛情」といった意味である。
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上の写真は韓国の海外文化広報院がハイチ地震の時に復興のために派遣された兵士が地域の少年にチョコパイを分ける写真である。
この時映っているのもオリオンのチョコパイだ。

軍にいたときはとてもチョコパイを食べたかったです。チョコパイの袋に書いてある情という言葉に理由があると思うのですが、軍にいると、家族の「思い」や恋人の「愛情」などがどうしようもなく恋しいときがあります。なのでそのチョコパイを食べると何となくその人々の愛情を感じ、またその人々と思いを分け合うことができるように感じるのです。チョコパイの「情」というメッセージには軍隊にいて愛する人から離れている寂しさを慰めてくれる力があります

急に軍という言葉が出てきたが、韓国人男性にとって軍にいるときに食べられる甘いものといえばチョコパイだ。入隊しても階級が上がれば軍隊内の売店でいろいろなものが買えるようになる。しかし、訓練兵のときはまだ軍生活にも慣れておらず軍のご飯以外食べられるものはない。軍のご飯は外の生活になれたものにはおいしいとは感じにくいようだ。そんな訓練兵にとって日曜日に行われる宗教行事は甘いものに接するチャンスである。訓練生時代そこに行くとキリスト教(や仏教でも時には)ではチョコパイをもらえるところがあるので、そこにたった一つのチョコパイをもらうために行った思い出がある人が多い。そして、甘いものに触れていなかった時食べたチョコパイの記憶はとても鮮明であるようだ。




このように韓国人にとっても意味深いチョコパイだが、北朝鮮に対してもチョコパイは戦略的に使われている。

開城工業地区は、韓国が出資し、北朝鮮の人々が働いていたところであることは周知の事実だが、北朝鮮の核実験によって事実上閉鎖になった。給与は韓国から北朝鮮の従業員に直接渡していたわけではなく、北の政府を通して渡されていた。核の開発費に開城のお金が使われていたというニュースの意味は、北の政府が給与のうちからピンハネし核開発にお金を使い、わずかな金額を北の従業員に渡していたということだ。北朝鮮政府はピンハネによって2014年で年間8000億ドルを儲けていたと言われている。

その開城工業地域においてチョコパイが配られていた。その理由は次を読んでもらおう。

開城工業地域に進出している韓国企業は生産性を上げるためにチョコパイを支給した。韓国企業から直接賃金をもらえるわけではない北の労働者に時間外労働をさせても、その分賃金が増えるわけではなかった労働者に韓国企業がインセンティブとしてチョコパイの力を借りる方法をとった。

このようにチョコパイは北朝鮮に向けても意味が大きかった。北側の労働者の発言を見てみよう。

「いくら一生懸命仕事をしたところで受け取るお金で家族を食べさせられないのなら、いっそのことチョコパイで給料をもらうほうがいい」という話まで出ている。理由は北で2000ウォンで売れるチョコパイを10個もらうだけで月給よりも多いお金になると考えているからだ。
また、「韓国がおやつとしてくれるチョコパイが私たちの生命線だ」と話し、食糧難を解決しないまま何十年前の為替レートで給与を与える北の国家を批判する者もいる。と北の情報筋が話した。

ちなみに月給は約8700ウォンだそう。このように、韓国のチョコパイは写真のように韓国の広報に使われたり、対北朝鮮への資本主義の象徴としても使われたりする。実はおいしさで言えば、ロッテのほうがおいしいと言われているが、それでもオリオンの「情」は売れている。2015年12月の売り上げは一か月だけで101億ウォンと昨年の同時期に比べても20%以上増加しているという。オリオンが売っているのはチョコパイだけではなく「人の心」そのものだと韓国人には感じられるのだろう。